高尾駅の天狗像 / 中央線

JR中央本線高尾駅の3・4番線ホームの東京方に進むと、目に飛び込んでくるのは、迫力ある天狗の顔をかたどった石像である。全身像ではなく巨大な「顔のモニュメント」で、その存在感は駅を訪れる人々の目を引きつける。この天狗像は単なる装飾ではなく、高尾駅のランドマークとして高尾山信仰の世界を象徴的に伝える役割を担っている。

高尾山は古来より修験道の霊山として知られ、天狗信仰が根付く場所である。天狗は、高尾山薬王院の御本尊である「飯縄大権現(いづなだいごんげん)」の眷属、すなわちお使いの存在とされ、人々を災厄から守り、幸福をもたらすと信じられてきた。天狗信仰では一般的に、神通力を持つ「大天狗」と、剣術に優れた「小天狗(烏天狗)」の存在が語り継がれている。薬王院の境内にも、その姿を伝える像や面が数多く祀られており、高尾山の信仰文化を今に伝えている。駅ホームに設置された石像も、この天狗信仰の流れを汲むものである。

この石像は、高尾観光協会と高尾山薬王院の手によって1978年(昭和53年)に建立・設置された。素材は塩山御影石(花崗岩)で、高さ約2.4メートル、重さは約18トンに及ぶ。鋭い眼光や約1.2メートルの高く突き出た鼻、引き結ばれた口元が力強い表情を形作り、登山客や観光客を見守るように鎮座している。

設置以来40年以上にわたって、この天狗像は多くの人々に親しまれ、待ち合わせや記念撮影の定番スポットとなってきた。現在も良好な状態で管理されている。

こうしてJR高尾駅の天狗像は、高尾山観光の玄関口にふさわしい存在感を放ちながら、山に宿る霊気と歴史を現代に伝える象徴となり、これからも多くの人々を迎え、そして見送り続けるだろう。

高尾駅の天狗像 光景写真
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