横須賀海軍施設 1号ドック

横須賀海軍施設1号ドックは、神奈川県横須賀市に位置する日本最古の石造ドライドックである。完成から150年以上が経過した現在も、日米の艦艇修理施設として現役で稼働しており、日本遺産の構成文化財として認定されている。

このドックの建設は、江戸時代末期にまで遡る。開国に伴い西洋式艦船の保有が急務となった江戸幕府は、勘定奉行であった小栗忠順の進言のもと、艦船の修理・建造拠点として横須賀製鉄所(後の横須賀造船所)の建設を計画した。幕府はフランスの技術支援を受けることを決定し、海軍技師レオンス・ヴェルニーを首長として招聘した。

ヴェルニーの指導のもと、慶応元年(1865年)から横須賀製鉄所の建設が始まり、慶応3年(1867年)には1号ドックの工事に着手した。しかし、翌年の戊辰戦争により工事は一時中断を余儀なくされる。その後、事業は明治新政府に引き継がれて建設が再開され、明治4年(1871年)に遂に完成した。このように、幕府の計画が明治政府によって結実した1号ドックは、日本の近代化を象徴する事業の一つである。

建設には、石材として真鶴・熱海付近から新小松石(安山岩質)が使われ、ヴェルニーの設計指導のもと、フランスの技術と日本の伝統的な石工技術が融合した精緻な石積み工法により建設された。この卓越した技術の融合により、優れた水密性と150年以上の使用に耐える驚異的な堅牢性が実現され、現在に至るまで現役のドライドックとして機能し続けている。

1号ドックは建設以来、その役目を終えることなく、現在も在日米海軍横須賀基地の管理下で稼働を続けている。アメリカ海軍の艦艇はもちろん、同盟国である日本の海上自衛隊の護衛艦や潜水艦の修理・メンテナンスにも使用されており、日米の安全保障体制を現場で支える重要な施設となっている。日本の近代化黎明期に建設された施設が、歴史の荒波を越えて今なお国際的な役割を担っている事実は、このドックが持つ歴史的・戦略的価値の大きさを物語っている。

横須賀海軍施設 1号ドック 光景写真
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