951形は、日本国有鉄道(国鉄)が新幹線のさらなる高速化(将来的な時速250km級の営業運転)を見据え、走行技術の研究・開発を目的として1969年に製造した高速試験車両である。0系の最高速度、時速210kmを超える速度域での試験走行を通じて、新幹線技術の向上と次世代への技術継承に大きく貢献した、歴史的に重要な車両である。
2両編成の車体には、後の新幹線開発の礎となる新技術が多数盛り込まれた。最大の特徴は、車体へのアルミニウム合金の本格採用による大幅な軽量化である。これにより軌道への負荷軽減と走行性能向上に貢献した。先頭形状は0系より鋭いロングノーズ形状とすることで空力特性を改善、台車は2種類の構造を比較試験し、高速走行時の安定性に関するデータを収集した。また、高速域での離線対策として下枠交差式パンタグラフを、ブレーキには非接触式の渦電流ブレーキを試験採用するなど、後の新幹線技術の発展を見据えた多様な新技術の試験が行われた。
951形は開業前の山陽新幹線を使い、高速走行試験に投入された。1972年2月24日、西明石~姫路間において、当時の鉄道における世界最高速度となる時速286kmを達成した。この記録は、時速250kmでの営業運転の技術的な裏付けとなり、日本の鉄道技術の高さを世界に示す金字塔である。
なお、渦電流ブレーキについては初期段階で試験的に搭載されたものの、ばね下質量の増加などの課題が判明し、高速走行試験時には取り外されていた。
試験で得られた騒音、振動、乗り心地、ブレーキ性能など多岐にわたるデータは、その後の新幹線車両開発に全面的に活用された。まず0系の時速220km運転対応改造に反映され、さらに雪国を走る東北・上越新幹線用の200系の設計に直接活かされた。それだけでなく、100系や、時速270km運転を実現した300系「のぞみ」の開発に至るまで、技術的な基礎を築いた。
1974年に名目上廃車され、鉄道技術研究所での試験活用を経て、1980年に形式消滅・正式廃車となったが、先頭車両の951-1は東京都国分寺市の「ひかりプラザ」に静態保存されており、試験車としての技術的貢献を、現在も伝えている。951形は、単なる試験車にとどまらず、日本の新幹線を第二世代へと進化させ、今日の高速鉄道網の礎を築いた記念碑的な存在である。