第一松木川橋梁は、かつて東洋一の生産量を誇った足尾銅山の鉱石や資材を輸送するために建設された。足尾鐵道(後の国鉄足尾線)が足尾駅から足尾本山駅(現在は廃駅)への貨物支線を延伸する際の工事により1914年(大正3年)に完成し、現在はわたらせ渓谷鐵道の間藤駅と足尾駅の間に架かっている。
足尾銅山の繁栄を象徴するインフラであり、その歴史的価値から平成21年(2009年)に国の登録有形文化財に登録されている。
橋梁の最大の特徴は、その特異な構造にある。深く切り立った松木川の谷に、まず頑強な石積みの橋脚が築かれている。そして、その石積橋脚の上に、繊細な格子状の錬鉄製トレッスル橋脚が据え付けられている。このトレッスル橋脚は、明治22年(1889年)にイギリスの著名な鉄鋼会社で製造されたもので、もとは東北本線の橋梁で使われていた部材を転用したと伝えられている。異なる時代、異なる場所で生まれた部材が、当時の物資事情や土木技術を背景に組み合わされている点は、この橋梁の来歴を物語る上で非常に興味深い。
橋桁は、国産鉄道車両メーカーの草分けである汽車製造株式会社が製作した上路式プレートガーダー(デッキガーダー)であり、列車はこの桁の上を走行する。重厚な石積み、精緻な英国製錬鉄トレッスル、そして国産の鋼製橋桁という三つの要素が一体となり、機能性と造形美を両立させている。

