別所温泉駅 (上田電鉄)

長野県上田市に位置する別所温泉駅は、上田電鉄別所線の終着駅であり、「信州最古の温泉」とも伝わる別所温泉の玄関口である。別所温泉は、約2000年前の景行天皇の時代に日本武尊が発見したという伝説が残る歴史深い地であり、この駅は長年にわたり多くの旅人を迎えてきた。

駅の歴史は1921年(大正10年)の「別所駅」としての開業に始まり、数度の改称を経て1930年(昭和5年)に現在の「別所温泉駅」となった。現在の木造駅舎は1950年(昭和25年)の建築で、レモン色の壁と水色の窓枠というモダンな配色が特徴である。そのレトロで美しい佇まいは高く評価され、2017年には上田市都市景観賞を受賞した。ホームは単式1面1線で、終着駅ならではの旅情あふれる雰囲気を醸し出している。

駅舎内には待合室のほか、別所温泉の観光案内所が併設され、旅の拠点として機能している。2022年からは基本的に無人駅となったが、窓口での営業は継続されている。また、構内にはかつて別所線を走り「丸窓電車」の愛称で親しまれた名物車両モハ5250形が静態保存されており、鉄道ファンにとっても見どころの一つとなっている。

駅を降り立てば、目の前には温泉旅館街が広がり、北向観音をはじめとする歴史的な寺社仏閣も点在する。かつては袴姿の女性駅長が名物であったことからも、この駅が温泉地のおもてなしの心と共にあったことがうかがえる。別所温泉駅は、単なる交通機関の終点ではなく、そのもの自体が歴史と文化を物語る、地域に愛される存在なのである。

別所温泉駅 (上田電鉄) 光景写真

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