銚子電鉄 デキ3形 電気機関車

銚子電気鉄道に在籍するデキ3形電気機関車(デキ3)は、1922年(大正11年)にドイツのAEG社(アルゲマイネ・エレクトリツィテート・ゲゼルシャフト)で製造された小型の凸型電気機関車である。100年以上の歴史を持つ日本最古級の動態保存車両であり、軌間1,067ミリメートルの狭軌用電気機関車としては鉄道事業用として運用された車両の中で日本最小級の車両として知られている。

デキ3が最初に活躍したのは、千葉県ではなく山口県の沖ノ山炭鉱(現在の宇部興産の前身)における専用鉄道であった。ここで石炭輸送などに従事した後、戦時体制下にあった1941年(昭和16年)に銚子電気鉄道へ移籍した。銚子に移ってからの主な任務は、沿線にあるヤマサ醤油への貨物輸送であった。仲ノ町駅を起点とするヤマサ醤油の引き込み線などで、醤油の原料や製品を積んだ貨車を牽引する姿は、地域の産業を支える日常風景の一部となっていた。この貨物輸送は長年にわたり続けられたが、輸送手段がトラックへ転換されたことにより1984年(昭和59年)に廃止され、デキ3は定期運用から引退した。

デキ3の最大の特徴は、全長約4.4メートルという極めてコンパクトな車体にある。現代の鉄道車両と比較するとその小ささは際立っており、まるで模型のような佇まいを見せる。運転台が中央にあり、前後に短いボンネットを持つ古典的な「凸型」のスタイルを保っている。

定期運用引退後は廃車を免れ、現在も仲ノ町車庫にて大切に動態保存されている。ATS(自動列車停止装置)を搭載していないため本線を自走することはできないが、イベント開催時の展示走行や運転体験などで今もなお元気な姿を見せている。デキ3は、大正期ドイツの技術を今に伝え、日本の石炭産業から地方の醤油産業までを支えた生き証人として、銚子電気鉄道のシンボルであり続ける貴重な産業遺産である。

銚子電鉄 デキ3 外観写真
銚子電鉄 デキ3 外観写真
銚子電鉄 デキ3 内部写真
銚子電鉄 デキ3 内部写真
銚子電鉄 デキ3 外観写真
銚子電鉄 デキ3 外観写真

▼ 銚子電鉄 展示写真 より

銚子電鉄 デキ3 資料写真

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