鎌倉国宝館 扉のステンドグラス / 小川三知 作

鶴岡八幡宮の境内にあり、緑豊かな木々に包まれて静かに佇む鎌倉国宝館。その正面玄関の扉にはめ込まれたステンドグラスは、日本におけるステンドグラス制作の先駆者として知られる芸術家、小川三知(おがわさんち)の作品である。

作品の意匠は、鎌倉という土地の歴史と深く結びついている。制作当時に使われていた旧鎌倉町の町章を基にしたもので、この町章のモチーフは、「星月夜(ほしづくよ)」という鎌倉を象徴する言葉に由来する。

星月夜は、極楽寺坂切通し付近にあった「星月夜の井[星の井]」で、井戸の中に星影が涼しげに映ったという伝説から生まれた。山に囲まれた鎌倉の谷戸(やと)では、狭い夜空に星がひときわ明るく輝いて見えたといわれ、「我ひとり鎌倉山を越へ行けば 星月夜こそうれしかりけれ」(後堀河百首)と詠まれるように、古くから鎌倉という土地の心を映す言葉として、人々に親しまれてきた。このステンドグラスは、旧町章という公的なシンボルを通して、鎌倉の精神性を美しい光のアートとして表現したものである。

昭和3年(1928年)の開館以来、長きにわたり、数多の来館者と、館内に収蔵される貴重な文化財を見守り続けている。

鎌倉国宝館 扉のステンドグラス
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