品川 / 幻の高架橋

高輪ゲートウェイ駅から品川駅手前にかけての旧田町車両センター跡地では、大規模な再開発が進められている。このエリアにはかつて、戦前に計画されながらも完成に至らなかった未成の高架構造物が存在した。

この構造物は、戦前の鉄道省が構想した、東京〜品川間の輸送力増強のための新線計画に関連するもので、停車駅を限定した速達列車用の高架線を設けることを想定していた。これにより、緩行列車(各駅停車)と速達列車が干渉せずに運行できる構想であった。

実際に浜松町から田町、品川にかけて一部が着工されたが、戦局の悪化に伴う資材や労働力不足のため、工事は中断された。その後、社会情勢の変化や輸送体系の見直しにより、計画そのものは放棄されることとなった。

田町〜品川間の旧田町車両センター敷地西側には、高架橋脚や橋桁が長年残され、未成線の痕跡として知られていた。山手線や京浜東北線の車窓から望むことができ、その特異な姿から「幻の高架橋」と呼ばれ、鉄道ファンなど間で語り継がれた。

しかし、田町〜品川間の再開発(のちの高輪ゲートウェイ駅設置を含む)に伴い、2014年12月から翌年7月頃にかけて解体撤去が行われた。旧田町車両センター自体も2013年3月のダイヤ改正で車両配置が終了し、跡地は現在「TAKANAWA GATEWAY CITY」として再開発が進行しており、2024年には一部施設が完成した。

旧田町車両センター脇に残されていた未成高架橋は、戦前に鉄道省が計画した速達列車用高架の一部として建設されながら、戦局や戦後の社会的変化によって未完に終わった遺構だった。物理的な痕跡は消えたものの、この『幻の高架橋』は未成線の象徴として、東京の鉄道史に静かに刻まれている。

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